SPECIAL CONTENTS

教えて!山下先生 知っておきたい妊活のこと

赤ちゃんを望むふたりが妊活をはじめるとき、
大切にしたいこと。
それは、お互いの気持ちの歩幅を合わせて、
自分たちらしい妊活をみつけることです。
産婦人科医の山下先生のアドバイスを参考に
まずは、からだのこと、妊活を知ることから
ぜひはじめてみてください。

#1 妊活に向けて準備したいこと
#2 妊娠を引き寄せるためには
#3 もしかして不妊?と思ったら
#4 正しく確認したい妊娠のしるし

【 監修 】

板橋区医師会病院
産婦人科
山下有紀先生

山下有紀先生

初対面でも話しやすい気さくな人柄と
わかりやすい語り口で、患者さんやそのご家族、
看護師さんからの信頼が厚い。
2019年からは、高校生に正しい性知識を
身に付けてもらうための教育指導にも
力を注いでいます。

#1

妊活に向けて準備したいこと

「赤ちゃんがほしい!」

お互いに同じ気持ちでしたら、今すぐにでも妊活をスタートさせましょう。ライフプランを相談したり、妊娠や自分たちのからだについて知識をつけたり、なるべく早い時期に検診や検査を受けたり。妊娠に向けて、ふたりで取り組めることからはじめてみてください。

山下先生

1.ライフプランを話し合う

100人いれば100通りのライフプランがあります。だからこそ、自分たちらしい妊活をするためには、年齢や体力を考慮したうえで、お互いが描く未来について話し合うことが大事です。ふたりが納得しベストな選択ができるように、人生や仕事、お金のプランを話し合い、準備していきましょう。

考えたいこと

子どものこと

  • 何人欲しい?産む時期や間隔は?
  • どんな環境で学ばせたい?習い事は?
  • 教育費は?

ふたりのこと

  • 家庭の経済状況は?
  • お互いのキャリアプランは?
  • 趣味や資格は?
  • 老後の暮らしや親の介護は?
女性にも男性にもある
妊娠のタイムリミット

女性は卵巣内に卵子のもととなる卵胞を抱えています。その数は生まれる前の胎児がピークで、日々少しずつ減り続け、決して増えることはありません。
また最近では、年齢を重ねるごとに卵子の質も低下し、老化していくともいわれ、妊娠するための力は、35歳ごろから一気に下がるために、妊娠の確率も低下してしまうのです。
じつは女性だけではなく男性も、35歳を境に精子の数が減少するとともに運動能力が低下し、生殖能力も下がっていきます。タイムリミットを把握し、ふたりらしいライフプランを組み立てましょう。

出生時は約200万個あった卵子は、35歳ごろには約5万個まで減少
※Banker TG(1972) Gametogenesis,Acta Endocrinol Sullpl 166;18-42を基に改変
キャリアプランを考える

人生において、ライフステージが大きく変化するタイミングのひとつが、出産・育児です。
とくに女性にとって出産は、キャリアプランに大きく関わります。
女性・男性のどちらかがキャリアを諦めるのではなく、会社の制度を上手に活用しながら、お互いが仕事を調整し、一定期間は働き方を柔軟にするなど、子育てという貴重な体験が楽しめる方法を探ってみませんか。

調べておきたいこと

会社のこと

  • 産休や育休はどのくらい取得できるか
  • 復職後は希望通りに働けるのか
  • 男性パートナーの育休

子どものこと

  • 子どもの預け先

2.妊活をはじめる前に
チェックしたいこと

おなかのなかで赤ちゃんを元気に育てるためには、お母さんとなる女性のからだの健康が何よりも大切です。

妊娠前に受けておきたい検査項目
風疹抗体検査

妊娠初期に風疹にかかると、おなかの赤ちゃんにも感染し、耳が聞こえにくい、目が見えにくい、心臓に病気があるなど、「先天性風疹症候群」という病気にかかってしまうことがあります。(厚労省より)
風疹抗体の検査は、妊娠中は風疹の予防ワクチン接種ができませんので、妊娠前に必ず検査を受けて確認しておきましょう。

子宮がん検診

早めに子宮がん検診を受けましょう。もしも子宮にトラブルが見つかっても、早くから治療をはじめることで妊活期間を確保することもできます。

歯科検診

女性ホルモンの影響により、妊娠中は虫歯や歯周病になりやすいといわれているため、前もって歯科検診を受けておくと安心です。

妊活視点で見直したい
生活習慣

今まで普通にやっていたことでも、「妊活」という視点で見ると注意や見直しが必要な場合があります。

意識したいこと

ふたり

  • やせすぎず太りすぎず、適正な体重をキープする
  • アルコールは適量にする
  • 禁煙をする
  • 朝・昼・夜と栄養バランスの取れた食事を心がける
  • 無理なくからだを動かす
  • ストレスをため込まないようにする
  • 生活習慣病(血圧・糖尿病など)をチェックする

女性

  • サプリメントを活用して葉酸を摂る
    推奨量:サプリメントなどから1日400μg※
  • からだを冷やしすぎない

※ 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020 年版)

男性

  • 通気性の良い下着をつけ、下半身を締めつけすぎない
  • 精子は熱に弱いため、熱い風呂やサウナで温めすぎない
  • 射精する日の間隔をあけすぎない
#2

妊娠を引き寄せるためには

ご存じでしょうか?

妊娠するうえでもっとも重要な排卵日は、健康なからだの女性でも1年に10~12回しかないという事実を。しかも、健康なふたりがしっかりタイミングを合わせても排卵1回あたりの自然妊娠の確率は約25~30%といわれています。
妊娠できること、命を授かることは、当たり前ではなく、奇跡に近いことなのです。その奇跡の妊娠を引き寄せるために一番大切なのが、卵子と精子が出会う「タイミング」。その時期を正しく把握するとともに、妊娠のしくみをきちんと理解し、積極的に妊活をしていきましょう。

山下先生

1.大切な日
「排卵日」を知ろう

妊娠の確率を高めるための重要な日が排卵日で、この日の前後がもっとも妊娠しやすいとされています。月に1度しか訪れることのない、貴重な排卵日を知る方法を学びましょう。

排卵日を予測する方法
基礎体温をつける

基礎体温とは、安静時の体温のこと。起床後、寝た状態のまま婦人体温計を用いて口の中で測定します。毎日記録することで、排卵の有無や排卵時期の目安を立てることができます。

排卵日予測検査薬を
活用する

検査薬に尿をかけるだけで、排卵日を事前に予測することができます。

おりものの変化を見る

おりものは女性ホルモンの影響によって状態が変化します。排卵日が近づくと、おりものの量が増え、質感がさらさらに変化します。

排卵時期が近づいてきたら

大体の排卵日を把握したら、できれば2日おきにタイミングをもちましょう。
自然妊娠では、排卵日前日にタイミングをもつことが妊娠率を高めるといわれています。

グラフ

2.妊娠のしくみを知ろう

妊娠は、女性の「卵子」と男性の「精子」が出会うことからはじまります。 無事に妊娠が成立するまでには、さまざまなプロセスをトラブルなく、すべてクリアしなければなりません。妊娠のしくみを理解することこそ、妊娠を引き寄せる第一歩なのです。

排卵

排卵
卵子を含む卵胞は、月経周期に合わせて成長し、大きく成長した卵子が卵巣から飛び出し「排卵」が起きます。その数は通常、1周期1個だけ。排卵後、卵子は卵管内で24時間というリミットのなか、精子との出会いを待ちます。

射精

射精
精液に含まれる精子は、1回の射精で約1~3億個。膣内に放たれた精子は泳ぎながら卵子がいる卵管を目指します。射精後の精子の寿命は3日間といわれており、卵子と出会う頃には、約100~1000個くらいにまで減ってしまいます。

受精

受精
卵管にも卵子のまわりにもたくさんの精子がたどり着きますが、卵子と結びつくことができる精子は1個のみ。その1個の精子が卵子に入り込むと、受精卵となり他の精子は入ることができなくなります。受精卵は、受精直後から細胞分裂をくり返しながら、5~7日くらいかけて子宮に移動します。

着床

着床
子宮内膜は、受精卵が着床できるようにふわふわのベッドのように厚くなっています。子宮内膜に受精卵がもぐり込んで着床することで、妊娠が成立します。
#3

もしかして不妊?と思ったら

日本では、不妊を心配したことがある夫婦は3組に1組、検査や治療の経験は5.5組に1組といわれています。
不妊治療や検査と聞くと、最後の手段と不安になるかもしれませんが、今のからだの状態を知ることこそ、妊娠への近道になると考えるだけで、少し気持ちがラクになりませんか。まずは検診ができる婦人科を受診してみましょう。

山下先生

1.自然なタイミングでなかなか
できないと思ったら

積極的に妊活しているのに、なかなか妊娠しないときは「もしかして不妊?」と心配になることでしょう。一般的に不妊の定義は、避妊をせずに通常の性交を続けて1年以上妊娠しない状態とされています。年齢と健康状態によっても変わりますが、20代であれば1年、30代であれば約半年の間、積極的にタイミングをもってもできなかった場合は、一度検査してみるとよいでしょう。

2.不妊の原因とは

不妊の原因はカップルによりさまざまですが、世界保健機関(WHO)によると、不妊の原因が「女性のみ」41%、「男性のみ」24%、「男女とも」24%であり、約半数は男性側にも原因があることが分かっています。

不妊症の原因は48%が男性にも

参考:世界保健機関(WHO)による不妊原因の調査結果(1996年)

3.不妊治療はふたり
同じ温度感で

不妊治療は「なぜ子どもができないか?」という原因から調べますが、原因不明となることも少なくありません。不妊の原因は男女ともにあることを理解したうえで、できるだけ早く治療をスタートさせるためにも、ふたりで一緒に検査を受けるようにしましょう。

不妊治療のステップ
不妊治療のステップ

カップルによって不妊治療のステップは異なります。新しい治療をスタートさせる前に、医師やパートナーと疑問を解決し、同じ温度感で進めていけるようにしましょう。

女性の場合は検査や治療などにより、通院回数が増えることもあります。働きながらでも治療に通いやすい病院を選ぶことも大切です。

山下先生

4.気になる保険適用のはなし

2022年4月より、人工授精、採卵、体外受精、顕微授精などの不妊治療に対して、公的保険が適用(一部、保険適用外医療あり)となりました。また、男性の不妊治療に関しても保険適用がある処置もあります。男女ともに不妊治療の選択肢が増えることが期待されます。

表

保険適用の対象は不妊症と診断された
男女であること

医療費控除

年間の治療費が10万円を超えた場合は、医療費控除の対象になります。確定申告を行えば、還付金を受け取ることができます。また高額医療保障制度の対象にもなります。医療費には通院時の交通費や薬代も含まれるため、領収書の保管を忘れないようにしましょう。

体外受精で生まれた赤ちゃんは年間6万人を超え、全体の14人に1人の割合なので、けっして珍しいことではありません。
不妊治療はスタートが早ければ早いほど、年齢が若ければ若いほど、妊娠率は高くなります。子どもが欲しいなと思ったらポジティブに妊活に取り組み、不妊かもと思ったらふたりで一緒に積極的にトライしていきましょう。

山下先生
#4

正しく確認したい妊娠のしるし

妊活が進むと妊娠に対して敏感になり、ちょっとした体調の変化でも、これってもしかして!と気づくことがあります。
赤ちゃんからのしあわせサインを見逃さないためにも、妊娠の初期段階に起こりやすいからだの変化を覚えておきましょう。

山下先生

1.からだが教えてくれる
妊娠のサイン

女性のからだは妊娠すると赤ちゃんを育てるために、お母さんのからだに変わっていきます。

妊娠の初期段階でみられる兆候
  • 基礎体温の高温期が長く続く
  • つねに眠気やだるさがある
  • 胸の張りや痛み
  • 吐き気をともなう胃のムカつき
  • 生理が規則的な人は、生理予定日が
    2週間遅れている

2.もしかして!と思ったら、
焦らずにセルフチェックを

いつもと違うからだの変化を感じたら、すぐにでも妊娠検査薬でチェックをしたくなります。でも、検査の時期が早すぎてしまうと、正しい結果がでないことがあります。
妊娠検査薬の使用目安は、生理予定日の約1週間後から検査が可能なものが多いので、正しい時期に使用するとともに、体調の変化に気を配りながら、焦らず経過をみていきましょう。

3.妊娠初期の過ごし方

あれこれと心配になりますが、普通どおりの生活をして大丈夫です。赤ちゃんの生育に影響を及ぼすたばこ・飲酒はやめましょう。
気をつけることは大切ですが、気をつけすぎるとストレスを感じたり、気持ちが落ち込んでしまいます。日々お腹のなかですくすくと育っていく赤ちゃんのために、お互いに気持ちを寄り添わせ、相手を思いやる行動やコミュニケーションを取っていきましょう。

山下先生
© PIP CO.,LTD. All Rights Reserved.